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ダーウィンのミミズ

  • 代表 本吉 進
  • 2019年11月4日
  • 読了時間: 4分

ウナギ釣りの餌は色々あるワケですが、やはり、(ドバ)ミミズが一番釣れるらしい。で、先ほど書いた「大関」は10匹ほどの太ミミズが入っていて、なんと税込で690円もしました(なお、9月はまだ消費税は8%でした)。以下の考察のおかげもあり、ミミズに関心が高まった以上、ぜひ来シーズンは野生のドバミミズを狩猟して餌に使いたいものです。


ウナギに関心が高まった過程で、当然、私としては何らかの文献に手を出すワケですが、古本での入手ではありましたが、築地書館という出版社の水産総合研究センター叢書なるシリーズの『うなぎ 謎の生物 THE EEL IS MYSTERIOUS』は、世間も賑わせているウナギの完全養殖を研究している官民のチームの方々が執筆された本で、その内容の総合性、信頼性などから非常に良い本と思いました(なお、一昨日くらいに、マグロの完全養殖で有名な近畿大学の水産研究所が、困難とされてきたニホンウナギの人工孵化に成功したとのニュースがありました。素晴らしい達成ですし、ぜひ今後も頑張ってほしいです)。


で、この本の冒頭部分が、非常に示唆に富む内容になっている。引用します。


「今から2000年以上も前のこと、紀元前4世紀に古代ギリシャの有名な哲学者アリストテレスが著した『動物誌』という本があります。アリストテレスがその本の中で、


「ウナギは大地のはらわたから生まれる」


と書いていることは、広く知られています。有名な自然発生説です。大地のはらわた、つまり泥や湿った土の中で生まれるとされており、それは今でいう「ミミズ」だと考えられています。その後、17世紀になっても、ウナギの寄生虫をウナギの仔魚(子供)だと考えた研究者もいたそうです。それほどまでに、ウナギがどこで生まれどのように育つのかは、二千数百年もの間、謎とされてきました。

20世紀後半になってニホンウナギの研究が大きく前進し、1991年6月の調査で、マリアナ諸島西方が産卵場であることが、ほぼピンポイントで特定されました。翌1992年には、世界で最も権威のある学術雑誌の一つである『ネイチャー』の表紙を飾るビッグニュースとなりました。」


私も尊敬してやまないアリストテレスですが、彼の想像力ですら、ウナギ≒ミミズだったと。しかし、上記の通り、ウナギは実際、ミミズを好んで食べるので、あながち馬鹿にできないアナロジーかも知れません。で、アリストテレスはおろか、ウナギの精巣を探して解剖しまくっていたフロイトでさえ、ウナギが遠方の海洋との間で遥々、産卵のために移動しているとは知らなかったでしょう(ちなみに、この本によれば、ヨーロッパウナギの産卵場所は、北大西洋のサルガッソ海らしい。なお、この好著に文句をつけるとすれば、第3章の「ウナギの性」の節で、前の記事でUPしたフロイトの業績に対する言及がまったくないことでしょうか・・・・)。しかし、サケが産卵のために海から川に還ることはよく知られていますが、ウナギが産卵のために川から海に還ることは、あまり知られていないと思いますが、いかがでしょうか?


そして、この手の「生物に関する壮大な想像力」を掻き立てる場面で呼び出されるべきは、他でもないチャールズ・ダーウィンかと思います。で、極めて興味深いことに、ダーウィンの最後の著作は『ミミズの作用による扶土の形成』なる、ミミズに関する本でした。ダーウィンがビーグル号での航海の過程で、かのライエルの『地質学原理』から多大な影響を受け、それが後の進化論の発想につながったのは有名な話ですが、ダーウィンは、下等ながらもその絶え間ない作用を通じて土を肥やして、壮大な水準でまさしく「地質」を変えてしまうミミズという小さな生物に、生涯、関心と敬意を抱き続けたのでした。写真の『ダーウィンのミミズ、フロイトの悪夢』(原題は「DARWIN'S WORMS」のみです)は、そのようなダーウィンのミミズに対する拘りと、ダーウィンから多大な影響を受けたフロイトの「死」(具体的には、死後に勝手な伝記を書かれてしまう恐怖)に関する思索を繋げて展開した本ですが、まだ全部読んでませんけども、若干、牽強付会っぽい部分も感じます(著者のアダム・フィリップスは精神分析家で、専門はむしろフロイトですね)。私なら、どうせ書くなら「ダーウィンのミミズ、フロイトのウナギ」にするでしょう!!


以上、ウナギ釣りでの餌のミミズの克服から、フロイトとダーウィンへの尊敬が、さらには自然の崇高さへの関心がさらに高まったということの記録でした。



 
 
 

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